米FOXテレビは、米海軍が南シナ海の西沙(英語名・パラセル)諸島で24日、「航行の自由」作戦を実施したと伝えた。中国が実効支配するトリトン(中国名・中建)島の12カイリ(約22キロ)内を、横須賀基地を母港とするミサイル駆逐艦「ステザム」が航行した。南シナ海での作戦実施は今年5月以来6度目。トランプ政権発足後ではこれが2度目となる。北朝鮮の核・ミサイル開発問題に積極的に対応するよう中国に圧力をかけるのが狙いと見られる。
米中両国は4月に米南部フロリダ州で開いた首脳会談で北朝鮮の非核化に合意、トランプ政権は、北朝鮮の貿易取引の9割を占める中国に積極的な役割を果たすよう期待を寄せた。しかし、6月21日にワシントンで開いた初の外交・安全保障に関するハイレベル対話でも、具体的な成果が出なかったことに米政権は不満を募らせている。
こうした事態を受けてトランプ政権は、6月29日に北朝鮮の核・ミサイル開発を支援したとして中国の金融機関に対する独自制裁を科すとともに、台湾への武器売却を決定。さらに、2日に南シナ海での「航行の自由」作戦に踏み切った。立て続けにカードを切った形で、7〜8日にドイツで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて開く米中首脳会談でのやりとりに注目が集まる。
トランプ政権は、昨年7月に仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が、中国が主張する南シナ海の権益を否定する判決を下した後も、中国が人工島の整備を続けることを強く非難している。人工島を商業衛星写真で分析している米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が6月末、南シナ海の人工島に通信・レーダー施設の建設を続けていると発表している。
中国は1974年以後、トリトン島を含む西沙諸島を実効支配、領有権を主張する台湾、ベトナムと対立している。中国は周辺海域で石油掘削装置(オイルリグ)を設置するなどしてベトナムと対立。双方の船が衝突しベトナム船が沈没する事件も起きている。米海軍は2016年1月と10月月にも、トリトン島周辺海域で「航行の自由」作戦を実施している。
トランプ政権は「国際法の下で、すべての国の(航行の)自由と権利を守るため、今後も定期的に『航行の自由』作戦を続ける」(国防総省)方針を示している。


