草原に黄色い花を見つける(毎日新聞)
米国で映画作りを学んだのちに祖国ベトナムへ戻り、同国を代表するヒットメーカーとなったヴィクター・ヴー監督の2015年作品。12歳の少年ティエウは幼なじみの女の子ムーンに淡い恋心を抱いているが、その思いを伝えられずにいた。ある日、ムーンが自分の弟トゥオンとばかり遊んでいることに嫉妬したティエウは、取り返しのつかないことをしてしまう。
全編が子供の目線で撮られた初恋物語だ。純真で快活な弟とは対照的に、思春期を迎えてもう無邪気ではいられなくなった主人公の恋の苦しみや痛みを繊細に表現。子役たちの表情や仕草をいきいきと捉えた描写の数々、周囲の大人たちとのエピソードやファンタジックなおとぎ話を絡めたドラマの柔らかな語り口にも魅了される。詩情豊かな田舎の風景がかき立てる甘いノスタルジーと、物語からにじみ出す切ない情感が見事に溶け合い、まっさらな気持ちでスクリーンと向き合える良作である。1時間43分。新宿武蔵野館。