A. ベトナムの法律上未就学児を持つ女性労働者に対して育児手当や幼稚園の設立補助に関する「計画を整備すること」を求める規定があります。詳細は以下の通りです。
ベトナムに駐在している方々には顕著なことかと思いますが、ベトナムでは女性の労働参加率は極めて高くなっています。世界銀行の総計データによれば、1990年から2016年まで、ベトナムにおける全労働者に占める女性労働者の比率は、一貫してほぼ48%を占めています(同時期に、日本では40%から43%に若干上昇しています)※1。そして、国民全体での若年層の多さからして、女性労働者の多数は、育児をしながら勤務している状況にあるものと思われます。そのような状況を考慮し、ベトナムの法令では、未就学児を持つ女性労働者に関する特別な規定を男女平等法(法律73/2006/QH11)、労働法、労働法の施行政令である政令85/2015/ND―CP号(以下、「政令85号」という)に置いています。
まず、男女平等法では、労働における男女平等を確保するために、雇用者は女性労働者に対する特別な規定を実施する義務を負うとされていますが、未就学児を持つ女性労働者について具体的な規定は置かれていません。
労働法第154条は女性に対する雇用者の義務を定め、同条第4項では雇用者は女性労働者に対して保育園・幼稚園の設立を補助、支援する、または女性労働者が子供を預ける費用の一部を補助することを義務として定めています。しかし、この条文も、その支援、補助の内容について具体性に欠けているところ、その内容を定めているのが政令85号です。
政令85号では、第9条において、雇用者が、具体的な状況に応じて、女性労働者に対して、(イ)保育園・幼稚園に関する補助またはその建設を行うこと、または(ロ)保育園・幼稚園の対象年齢の子供を養育中の女性労働者に対して現金もしくは現物で補助することについての、「計画を整備すること」を雇用者に求めています。
なお、この義務の違反については、罰則は定められていません。また、この本政令が公布された際、労働・傷病軍人・社会事業省の法務局長は、この政令の精神は「指導」および「奨励」であると言っています※2。ベトナムにおいて、法令は、必ずしも一言一句遵守することを求めるものではなく、国家、社会をあるべき姿に向けて誘導し、運営していくための一つのツールである、という指摘がありますが、この政令もそのような位置づけのものとして理解することも可能かもしれません。とはいえ、「計画を整備すること」は法令上求められていますので、実情に即して検討されることをおすすめします。
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